ピアノ曲
世界一難しいピアノ曲
速いから難しい曲もあれば、手を跳ばしたり、広げたり、1時間弾きつづけたりするから難しい曲もあります。ピアニストがくり返し名前を挙げる曲と、それぞれの難しさ、聴きどころを紹介します。最後に、あなたの指の速さも試してみましょう。
「難しい」にもいろいろある
公式なランキングはなく、ピアニストどうしでも議論は尽きません。難しさには種類があるからです。
- 速さ:1秒にたくさんの音を、すべて均等に。
- 跳躍:遠くの鍵盤に、見ずに、何度も正確に着地する。
- 手の広がり:1オクターブを超える和音。大きな手が有利です。
- 持久力:30分、あるいは4時間弾きつづける。
- 繊細さ:とても速く、同時にとても弱く弾く。
- 記憶:何千もの音を頭に入れておく。
その曲たち
順位は決めていません。どれも、このサイトの曲よりはるかに難しい曲です。それこそがポイントです。
バラキレフ「イスラメイ」(東洋風幻想曲)
1869
コーカサス地方で聴いた舞曲をもとにした曲。同じ音の連打と鍵盤をまたぐ跳躍が、全速力で8分ほど続きます。長いあいだ「これが弾ければ何でも弾ける」という物差しとされてきました。
聴きどころ:信じられない速さでくり返される同じ音。そして、唯一の休息となる、歌うような中間部。
ラヴェル「夜のガスパール」より「スカルボ」
1908
ラヴェルは友人に「バラキレフの『イスラメイ』より難しい曲を書きたい」と語り、その答えがスカルボでした。夜の寝室を跳びまわる小鬼。速い連打、大きく広がるアルペジオ、ささやきから轟音への急変を、ラヴェルらしい精密さで。
聴きどころ:冒頭のちらつくような連打。そして、あの速さのまま、どれほど弱く弾かなければならないか。
リスト「ラ・カンパネラ」
1851
パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の終楽章をもとにした、リストの「パガニーニ大練習曲」第3番。右手が鍵盤の中央から、1オクターブ以上離れた高い「鐘」の音へ何度も跳び、そのたびに軽く着地しなければなりません。
聴きどころ:すべての上で鳴りつづける高い鐘の音。そこへ一度もはずさずに跳ぶ右手。
リスト「超絶技巧練習曲 第5番 鬼火」
1852
沼地に揺らめく鬼火。右手が速く軽い重音を、弾きにくい指使いで弾きつづけ、それが空気のように聴こえなければなりません。12曲の超絶技巧練習曲のなかで最も難しいと言うピアニストも多い曲です。
聴きどころ:その軽さ。力んでいるのが聴こえたら、まだ弾けていない証拠です。
ショパン「練習曲 イ短調 作品10-2」
1833
曲全体を通して半音階が上下に走り、それを右手のいちばん弱い指(3・4・5)が弾きながら、親指と人差し指が下で柔らかな和音を鳴らします。短いけれど、つらい曲です。
聴きどころ:均等であろうとしない指でつくる、均等な半音階の流れ。
ショパン「練習曲 嬰ト短調 作品25-6(三度)」
1837
右手で2音を同時に弾く「三度」の練習曲。速い半音階の三度とトリルが続きます。なめらかな三度はピアノで最も難しい技術のひとつ。それが一瞬も止まりません。
聴きどころ:冒頭の三度のトリル。それだけで、弾けるかどうかがすぐにわかります。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第29番 ハンマークラヴィーア」作品106
1818
演奏時間は約45分。最後は巨大で入り組んだフーガで終わります。ベートーヴェンは第1楽章に2分音符=138というメトロノーム記号を書きました。あまりに速いので、多くのピアニストはそれより遅く弾き、本気だったのかどうか今も議論が続いています。
聴きどころ:冒頭の跳躍。そして、いくつもの声部が同時に駆けまわる終楽章のフーガ。
ブラームス「パガニーニの主題による変奏曲」作品35
1863
ブラームスは「ピアノのための練習曲」という副題をつけました。リストやラフマニノフも使ったパガニーニのカプリースの主題による2巻の変奏曲で、大きく手を広げる和音から2対3のリズムまで、1曲ごとに別の技術的課題に挑みます。
聴きどころ:変奏のたびに、そして左右の手それぞれに、新しい課題が出てくるところ。
ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」
1909
「ラフ3」。映画『シャイン』でコンサートホールの外でも有名になりました。とても大きな手を必要とする分厚い和音(ラフマニノフ自身は13度まで届いたと言われます)、第1楽章の巨大なカデンツァ、そして約40分、ピアノはほとんど休みません。
聴きどころ:冒頭の、飾り気のない静かな旋律。そこから、ピアノがどれほど遠くまで旅するか。
ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」
1921
ストラヴィンスキーがバレエ音楽をアルトゥール・ルービンシュタインのためにピアノ曲にしたもの。オーケストラをそのまま詰めこんでいて、両手が同時に、しばしば別々の調で、鍵盤全体を跳びまわります。
聴きどころ:ひとりのピアニストが、どれだけのオーケストラを弾いているか。
アルカン「独奏ピアノのための協奏曲」(作品39より)
1857
オーケストラのない協奏曲。ピアニストが独奏とオーケストラの両方を弾きます。第1楽章だけで30分近く、密度の濃い速いパッセージが続きます。
聴きどころ:同じ小節のなかで、ピアノがオーケストラになり、また独奏者に戻る瞬間。
ゴドフスキー「ショパンの練習曲による53の練習曲」
1894–1914
ゴドフスキーは、もともと難しいショパンの練習曲を53回も書き直しました。左手だけのものや、ショパンの練習曲2曲を同時に弾く「バディナージュ」まであります。
聴きどころ:左手だけの練習曲が、まるで両手で弾いているように聴こえるところ。
ソラブジ「オプス・クラヴィチェンバリスティクム」
1930
演奏時間は約4時間。あまりに密度が高く、ソラブジ自身が何十年ものあいだ、自作を人前で演奏しないよう求めていたほどです。難しさと同じくらい、その長さで必ず名前が挙がります。
聴きどころ:そのスケール。全曲を弾いたピアニストは、ほんのわずかしかいません。
リゲティ「ピアノのための練習曲集」
1985–2001
重なりあい、ずれていくリズムでできた現代の練習曲。左右の手で別々の拍子を刻むことも。「悪魔の階段」は、どこまでも昇りつづけ、頂上に着かないように聴こえます。
聴きどころ:どこまでもそろわない、左右の手のリズム。
あなたは何音弾ける? トリルテスト
トリルは2つの音をできるだけ速く交互に弾くこと。指の速さと均等さを測るいちばん基本的なテストです。10秒間、2つの鍵盤を交互に(パッドをタップするか、FとJで)、できるだけ速く、均等にたたいてください。
速さと同じくらい大切なのが均等さ。速くてもでこぼこなトリルは、遅くても均等なトリルより美しく聴こえません。本物のピアノでは2と3の指、次に3と4の指で試してみてください。ぐっと難しくなります。
はじめての曲から頂上へ
イスラメイを弾くピアニストも、最初は「メリーさんのひつじ」のような曲から始めました。このサイトで弾ける曲で、頂上への道をたどってみましょう。
上級と頂上のあいだには長い道のりがあります。バッハの平均律、ショパンの練習曲、ベートーヴェンのソナタ。先生とIvoryが、その一歩一歩を手伝います。日本でよく使われる教本の順番は教本の順番で紹介しています。
頂上を目指して、いま何を練習していますか? Ivoryはあなたの演奏を聴いて、どこがずれているかを教えてくれるピアノの先生アプリです。抜けた音、遅れて入る手、そろわない和音。気づいたことを伝えたうえで、正しい弾き方を実際に聴かせてくれます。
よくある質問
世界一難しいピアノ曲は?
ひとつには決められません。難しさにはいくつもの種類があるからです。ピアニストがよく挙げるのは、バラキレフ「イスラメイ」、ラヴェル「スカルボ」、リスト「ラ・カンパネラ」と「鬼火」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、そして長さではソラブジの4時間の大作です。
ラ・カンパネラはいちばん難しい曲?
難曲として最も有名な曲のひとつで、特に高い鐘の音への右手の跳躍が難所です。ただ、多くのピアニストは、イスラメイやスカルボ、リストの超絶技巧練習曲のいくつかを、少なくとも同じくらい難しいと考えています。
ピアノ曲を難しくするものは?
速さ(1秒にたくさんの音を均等に)、跳躍(遠くの鍵盤に正確に着地する)、手の広がり(1オクターブを超える和音)、持久力(何分も弾きつづける)、繊細さ(速く、しかも弱く弾く)、記憶。最難関の曲は、これをいくつも同時に求めます。
ショパンでいちばん難しい曲は?
練習曲なら、作品10-2(弱い指で弾く半音階)と作品25-6(速い三度)がよく挙げられます。大きな作品では、バラード第4番やピアノソナタ第3番の終楽章もよく名前が出ます。
プロのピアニストはどのくらい速く弾ける?
速いパッセージやトリルでは、片手で1秒に10音を大きく超えることも珍しくありません。しかも均等に。このページのトリルテストで、いまの自分を確かめてみましょう。
かんたんそうで難しい曲は?
ドビュッシー「月の光」やサティ「ジムノペディ第1番」は、聴くと素朴ですが、難しさはコントロールにあります。弱く、均等に、ペダルもちょうどよく。バッハ「プレリュード ハ長調」は、弾くのはかんたんでも美しく弾くのは難しい曲です。